幸田露伴作『五重塔』の放火犯人(?)を推理してみた:「宇太郎」文学散歩㉔
- 2021/12/19
- 00:05
ブログのタイトルを見て…
幸田露伴の『五重塔』は
ソンな話じゃナカッタよーな気がする

そう思った方も多いかも❓デス(笑)
ソノトーリで
幸田露伴の『五重塔』は
焼けません❕
現在…谷中墓地には
五重塔跡…があります
跡…なので
五重塔…はアリマセン
谷中墓地 五重塔跡 撮影:2021年12月11日
1957年(昭和32年)までは…
幸田露伴『五重塔』のモデルとなった
「五重塔」がアッタ場所です
五重塔跡の説明
幸田露伴『五重塔』のモデルとなった
谷中の五重塔は…
1772年の大火で消失
1791年に再建
幸田露伴『五重塔』は…
コノ1791年の再建が
実話=火事で焼失した五重塔の再建…が
モデルとして描かれている小説です
しかし…その後…
1957年(昭和32年)
谷中・五重塔は…
放火
により

消失しました
撮影:2021年11月07日
在りし日の谷中・五重塔の写真=幸田露伴『五重塔』のモデル
撮影:2016年10月10日
こんな五重塔が…
昭和の…
私が生まれる~少し前まで
建っていたんですねーーー😢
幸田露伴も
野田宇太郎も
本物の五重塔を見ています
――2016年のブログ――
。。。。。
私は…実は…タイヘンな勘違いをしていて…

この…昭和の放火
は…

幸田露伴の小説『五重塔』に触発されて
放火したのだと思っていた...
つまり…
幸田露伴の小説『五重塔』は…
放火による焼失で…物語は終わる…と思っていたのです
ところが💡......
いつまでたっても放火されない





私は…
放火する「人物」や「理由」を
妄想しながら~~
幸田露伴『五重塔』を📖
読み進めました
妄想1 十兵衛を恨む人物による放火=親方&その周辺人物
私は…今まで
恨みによる犯行だと思っていました
もともと
五重塔再建の仕事は…
大工の親方が請け負っていた仕事です
それなのに
十兵衛は
「自分がやりたい
」

和尚さんに直談判に行くワケです
十兵衛は…
ちょっと…KYな性格ーーー
大工の腕・才能&能力はあるけど世渡りがヘタ…な人物
実際…
親方の「2人で建てよう」という
親切な申し出を断って
親方を怒らせています
親方の女房や子分にも恨まれ
親方の子分から襲撃を受け
大怪我をします
私の妄想した
放火犯人の第一候補は…親方でした
妄想2 十兵衛・本人による放火
幸田露伴『五重塔』を📖
読み進むうちに…
親方ではない…と思いはじめました
親方は…
十兵衛の言動に、ムカつきながらも
「大人の対応」をしようと
努力する人でした
子分がしでかした…十兵衛への襲撃に対しても
十兵衛に謝りに行く人でした
私は…今まで
幸田露伴『五重塔』を読む前は…
恨みによる「五重塔」放火の物語
だと思っていました
ところが❕
幸田露伴『五重塔』を読み進むと📖
「恨みの物語」ではなく
「芸術を追究する物語」ではないか❓
そう~🤔~思うようになりました
十兵衛の性格…人柄が
完璧を求める
こだわる人物
作品に没頭すると
周りが見えなくなる~盲目になる性格
でも
女房子供には
やさしいし~
反省する心も持っている
まず…思いついた理由は…
十兵衛による「五重塔」放火の理由=1=
十兵衛は…
自分が気に入る…完璧な五重塔を建てるコトができなかった
それで…
コンナモン
無くなってしまえっ

コンナモンしか造れなくて
恥ずかしいーー😭
十兵衛の
完璧な芸術作品への「思い」が
五重塔消失を願ったのではないか❓
または…
十兵衛による「五重塔」放火の理由=2=
自分が…五重塔建設を望んだために
周りの人間を不幸にしてしまった❓
人間関係がグチャグチャになってしまった
「五重塔」建設中は気づかなかったけど
完成した後
人間関係のトラブルが生じ
心やさしい十兵衛は
自分の「我」を通したことを悔やみ
自分にとって1番大切なモノ=五重塔を
自らの手で
消失させる
。。。。。
我ながら…
ナカナカのストーリーですね~~~(笑)
ところが❕
実際の
幸田露伴作『五重塔』では…
十兵衛は…
親方の子分から襲撃を受け
大怪我をしながも
大怪我の翌日も
五重塔⋯を建てに出かけます
この行動が
禍を転じて福と為す
となるのです
十兵衛よもや来はせじと思い合うたる職人ども、ちらりほらりと辰の刻ころに来て見てびっくりする途端、精出してくるる嬉しいぞ、との一言を十兵衛から受けて皆冷汗をかきけるが、これより一同励み勤め昨日に変る身のこなし、一をきいては三まで働き、二と云われしには四まで動けば、のっそり片腕の用を欠いて、かえって多くの腕を得つに日々工事捗取り、肩疵治るころには大抵塔もできあがりぬ。
(引用:『五重塔』幸田露伴)
棟梁の十兵衛は大怪我をした
職人たちは
今日は十兵衛は来ない=仕事は休みだろー
そう思って
ゆっくり遅い時刻に出勤するワケです
ところが
十兵衛はすでに来ていた...

ソレまでは…
俄棟梁の十兵衛を馬鹿にし…
働きの悪かった…手抜き工事だった職人たちが…😲
これより一同励み勤め昨日に変る身のこなし、
急に働きがよくなったのです(笑)
そして…その働きは…
一をきいては三まで働き、二と云われしには四まで動けば
そのため…
のっそり片腕の用を欠いて、かえって多くの腕を得つに日々工事捗取
十兵衛は怪我をして
片腕が使えなくなったのに
かえって多くの✋を得ることがデキタのです
禍を転じて福と為す
ナンダカ~
~

今まで
人望のナカッタ十兵衛が…
変わってきています~
~

人間カンケー悪くなっていませんねーーー
十兵衛による「五重塔」放火の理由=2=
コレは…ハズレ
デス

そして…
工事は…着々と進み
五重塔は完成します
時は一月末つ方、のっそり十兵衛が辛苦経営むなしからで、感応寺生雲塔いよいよものの見事に出来上り、だんだん足場を取り除けば次第次第に露わるる一階一階また一階、五階巍然と聳えしさま、
(中略)
天晴れ立派に建ったるかな、あら快き細工振りかな、希有じゃ未曾有じゃまたあるまじと為右衛門より門番までも、初手のっそりを軽しめたることは忘れて讃歎すれば、円道はじめ一山の僧徒も躍りあがって歓喜び、これでこそ感応寺の五重塔なれ、あら嬉しや、
(中略)
奈良や京都はいざ知らず、上野浅草芝山内、江戸にて此塔に勝るものなし、
(引用:『五重塔』幸田露伴)
㊟巍然(ぎぜん)
高くそばだつさま。ぬきんでて偉大であるさま。
(引用:広辞苑)
足場を取り除き
姿を現した五重塔を目にした僧たち…
最初は十兵衛のことを馬鹿にしていた僧たちも
江戸1番の五重塔だ💛
と褒めちぎります
しかも…この後
百年に一度とない大嵐が来るのです









感応寺の僧は
五重塔が倒れるのを心配して
十兵衛を呼びにいきます
十兵衛の家は
瓦屋根が吹き飛んでいる状況でした
ようやく十兵衛が家にいたれば、これはまた酷いこと、屋根半分はもうとうに風に奪られて見るさえ気の毒な親子三人の有り様、隅の方にかたまり合うて天井より落ち来る点滴の飛沫を古筵でわずかに避け居る始末に、
(引用:『五重塔』幸田露伴)
自宅は…このようは被害を受けている大嵐なのに
十兵衛は…
次のように言います
出てはいかぬわ、風が吹いたとて騒ぐに及ばぬ、
七蔵殿ご苦労でござりましたが塔は大丈夫倒れませぬ、
なんのこれほどの暴風雨で倒れたり折れたりするような脆いものではござりませねば、
十兵衛が出かけてまいるにも及びませぬ、
(引用:『五重塔』幸田露伴)
十兵衛
たいへんな自信です
結局…
十兵衛の自信の通り…
五重塔は…大嵐に揺れはしたけれど









釘1本ゆるまず
板1枚はがれず
ゆがみもせず
持ちこたえたのでした
十兵衛の腕は…
技術は…
素晴らしいモノだったのです
十兵衛による「五重塔」放火の理由=1=
コレも…ハズレ
デス

幸田露伴『五重塔』
素晴らしい技術の五重塔を造った十兵衛…の物語は
このまま
ナンニモ
起こらずに…
めでたし~めでたし~
で終わるのでした~
~

へっ❓
ハッピーエンド💛…のお話でした~
~

私は…
幸田露伴には…申し訳ナイけれど
かなり拍子抜け...😅...したのでした
しかし❕
嵐の場面で…
私は…
ある文章を
思い出しました
それは…
『五重の塔はなぜ倒れないか』
上田 篤・著
現代建築では、建物に伝わる地震の揺れが軽減されるような構造を「免震構造」といっているが、
五重の塔は、この「免震構造」になっていた
トイウ…
かなりっ
感動しながら読んだ…

法隆寺の「心柱」…宮大工の話デス❕
私は…
幸田露伴『五重塔』の話は…
アノ法隆寺の話と同じだぁ~
😲
と思ったのでした


=つづく=
――野田宇太郎の後追い「文学散歩」――
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